(交換日記)コロナ禍の「雰囲気」

 102号室の大瀧哲彰です。

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているなか、私たちに制限がかかることの一つが「移動」だと思います。ちょっと隣の県にでかけることですら、嫌な目で見られる。本州に暮らしている私は、実家のある北海道に帰省することは、周囲から見れば、まるで火の中に飛び込んでいくように見えているのだろうか。

 「なんでいま帰るの?」――。そんな疑問を投げかけられると、「うん、まあ」と答えつつ、心の奥底では「なんでそんなこと聞くの?」と、逆に問いかけている。

 「いま」動かないと、会えない友達がいる、見られない景色がある……。そんな風に考えると、「いま」動かないと後悔するはず。

 先日、朝日新聞でこんな報道があった。長いけれど引用します。


 ”新型コロナウイルスの水際対策として、日本に住む外国人の再入国を原則禁止とする日本政府の措置に、見直しを求める声が上がっている。日本に生活基盤があり、家族がいたり仕事があったりする外国人でも、いったん出国すると戻ってこられなくなるためだ。「外国人であることを理由に再入国を拒むのは差別的だ」との指摘が出ている。

 九州に住むドイツ人の女性(44)は6月3日、母国で暮らす父を76歳で亡くした。持病が5月末から悪化し、急な訃報(ふほう)だった。「せめて父と直接お別れがしたい」。葬儀への参列を望み、在日ドイツ大使館に何度も問い合わせたが、「出国すると日本に帰れなくなるかもしれない」との説明だった。家族とも相談し、帰国は諦めた。

 葬儀にはテレビ電話を通じて「参列」。大学教員として働く夫(48)、息子2人と画面を見つめたが、父の顔は見られなかった。日本で暮らして2年。「普段なら、すぐに帰国できるのに。父との別れがこんな形になるなんて」”(2020年7月21日夕刊)


 確かに、移動には「感染」というが伴うかもしれない。でも、それ以上に大切な何かを、コロナ禍の日本に流れる雰囲気が奪っている気がする。

 そんなことを考えながら、北海道行きの飛行機のチケットを調べています。

Tetsuaki Otaki

95年北海道生まれ、大阪府在住。新聞記者。
執筆した記事、取材で感じたこと、文字にならなかった取材を文章にします。北海道、広島、三重、大阪、朝鮮半島の話題が多いです。

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