stardust albumと七夕

郵便受けに郵便物とほとんど受け取ることのできない不在連絡票が溜まっていくのとほとんど相対的に仕事でいっぱいの頭に疲れが溜まっていく。玄関だけはきれいに保ちたいと思いながら、毎朝出勤前にホウキでホコリを掃く時に今日も雨かと憂鬱な気分で一日が始まる。


今日は七夕らしい。


7月7日は織姫と彦星が一年に一度だけ会うことが許された、何ともロマンチックな日である。

北海道は8月7日が七夕と言われているが、僕の住む道南は7月7日が七夕で、子供達が歌を歌うとお菓子をもらえるという和製ハロウィンのような風習がある。


こんな梅雨時に星に思いを馳せる七夕という日が設定されたのには、雨が多い時期だからこそ、夜に満点の星空を眺めることができることを祈って、アルタイルとベガにセンチメンタルな物語を添えたらしい。こんな厚い灰色の雲の上でも、毎日星は輝いているというのに。


仕事終わりに車を小一時間走らせてお気に入りのカフェに入る。深夜23時まで営業しているこのお店は店内がやけに暗い。必ず流れているのは、harukanakamuraのアンビエントな曲で、北欧テイストの家具と観葉植物とオレンジ色の照明が室内の湿気と混じり合って日常から逃避させてくれる。


持ってきた分厚い新作の小説を読むのはやめて、テーブルに置かれている本に手を伸ばす。


星野道夫

糸井重里

村上春樹


カバーのついていない肌色の文庫本から離れて、黒いカバーに収まっている写真集のような本に手を伸ばす。背表紙には黒い字で、『stardust album』と書かれている。どうやらCDのジャケットらしい。ケースから出して、開いてみるとCDは入っていない。harukanakamuraの文章が書かれている。どうやら、亡くなった女性を偲んで集まったミュージシャンが行った一夜限りのライブ音源を収録した作品のようだ。ミュージシャンの想いと、歌詞が美しい星屑の写真と一緒に綴られていく。


世の中には数学のように決して割り切れないもので溢れている。そして時にそれが奇跡のような出来事として世界のどこかの街角で、名前の知らない誰かの元に現象として現れる。それが悲しい出来事なのか、幸せな出来事なのか、僕は知らない。


海外のとある競馬のレースで、単勝1.1倍というオッズのついた馬が走るレースがあった。誰しもが勝つと思っていた馬が出走する。しかし、最終コーナーを抜けて走ってきたのは、全く注目されていなかった馬である。その馬はこれまでのレースで負け続けていて、今回も全く期待されておらず、単勝何百倍というオッズのついた馬だった。当然大番狂わせであり、大穴馬の登場に会場は湧き上がった。一攫千金を目前に見ていた観客もいただろう。しかし、ゴールの手前でその馬は倒れて動かなくなってしまう。後ろを走っていた、単勝1.1倍の馬がそのまま1着でゴールする。会場は騒然となる。


後に調べてみると、その馬が倒れた理由は石だということがわかった。

石が馬の頭にめり込んでいたのだ。それで、馬は倒れてゴールすることができなかった。しかし、その石は地球上の石ではなかったようだ。つまり、隕石が降ってきたのである。そして奇しくも、その隕石が当たった単勝何百倍の馬は、stardustという名前だったという。


こんな話を、テレビで芸人が話しているのを聞いたことがある。信じるか信じないかはあなた次第。というアレだ。


世の中には、割り切れない出来事で溢れている。

それが悲しい出来事なのか、幸せな奇跡なのか、僕にはやはりわからない。


しかし、こんなに分厚い灰色の雲の上で、今日も星は輝いているのだ。


七夕の夜に、harukanakamuraとstardust albumがとても大切なことを思い出させてくれた気がする。


(お気に入りのカフェのチャイティーとブルーベリータルト。この窓際の席にstardust albumは置いてあります。手に取るのを見計ってマスターがharukanakamuraを流してくていると確信しています。)

Ryosuke Takahashi

オンラインシェアハウス Kaede Apartmentの管理人です。
95年 北海道生まれ、道南在住
趣味は、旅、映画鑑賞、読書、カフェ巡り

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