りとあにあのばす

僕はリトアニアにいる。リトアニア。リトアニア?りとあにあ??

リトアニアと聞いてパッと地理が頭に浮かぶ人は多くはないのではないか?

バルト三国の一国であるリトアニアは、ロシアの西、ポーランドの北に位置する。日本人では命のヴィザを発行した杉原千畝が有名だ。通貨はユーロ。日本より少し物価が安く、東南アジアよりも少し物価が高いイメージ。

バックパッカーである僕は少しでも費用を抑えるために移動はバスを活用する。お金はないが時間はたんまりとある。バックパッカーの特性の一つだ。

民泊アプリAirbnbで予約した宿へ向かうべく市バスを乗り継ぐ。大きな荷物を背負っているので絶対に席に座りたい。強気で乗り込み、勝利を勝ち取る。心の中で思わずガッツポーズをする。次の停留所でお婆ちゃんがバスに乗る。即座に笑顔を作り、席を譲る。人生なんてそんなもんだ。しばらく窓を覗き込み、見知らぬ風景をボーッと眺める。6月のリトアニアは蚊が多い。緑も多いが蚊も多い。いきなり隣の金髪眼鏡女子に話しかけられる。「Where are you from?」21歳の大学生ぐらいだろうか。僕と話しながら、ときおり自分の手に留まっているてんとう虫を優しく撫でる。iPhone6で写真を撮り始める。おすすめの観光地を聞く。「Old town is definitely worth it.」definitelyの発音が好きだ。強調したいという明確な意志が伝わってくる。今夜もし空いてたら、食事でも行こうと言いかけて自分の降車するべき停留所に着いてしまう。タイミングなのか、自分の勇気が足りなかったのか。大人しく民宿に行き、27歳のホストとアイスクリームを食べながらワールドカップのクロアチア対ナイジェリア戦を観る。決して悪い人生じゃない。夜ご飯を食べるべく、またしても市バスに乗り込む。街の中心部に向かう。ピンク色のスープを食べる。リトアニアの郷土料理でrootbeatを使用しているらしい。中々いける。なんでもチャレンジだ。お金もそんなにないので、早々に引き上げようとバス停に向かうが、帰りのバスが中々こない。30分ほど待ってみる。来ない。。あれま。近くの人に聞いてみるがまともに取り合ってくれない。困ったなぁ。途方に暮れていると、「Are you ok?」と声をかけられる。振り返ると、行きのバスで話した金髪眼鏡女子が目の前に立っている。まじすか、神様?事情を伝えると民宿まで送ってくれると言う。まじすか女神様?俺は世界で一番ラッキーな男なんじゃないかと思う。その子はアルバニア出身の21歳。大学では国際政治学を専攻している。アルバニア料理店で週6でアルバイトをしている。彼氏はいないが、複雑な関係の男の子は三人ぐらいいるらしい。ほうほうと聴き上手な僕は適切なタイミングで相槌を打ち、相手が心地よく話がしやすい環境を整える。聴く力が全てだ。論理的なアドバイスや自分の功績をアピールするような自慢話なんて必要ない。いかに相手に安心感を与えるかで決まると思っている僕は、自分のできることに集中する。だが、無情にも自分の帰るべき場所に辿り着いてしまう。Facebookを交換し、お別れのハグをして、頬にキスされる。日本に生きてたら、まずこんなことはないと強く思い、この思い出を死ぬまで忘れないぞとシャワーも浴びずに寝床に着く。その日は夢も見ることなく、秒速で眠りについた。ありがとう、リトアニア。りとあにあ。

リトアニアのピンクのスープ。ピンクは色彩心理学的には人間の闘争本能を奪う色らしい。プロレスラーとかに食べさせてみたいです。

Taro Yukino(雪野太朗)

Taro Yukino(雪野太朗)
95年お茶の国生まれ。お茶の国在住。リーマンしてます。
本とパフェとアイスランドが好きです。
エッセイ、紀行文、短編小説がメインのお部屋となります。
サメに噛まれるのが怖くてやれなかったサーフィンを始めた男です。明日天気になあれ。

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