いきたい国 後編

レンタカーショップで車を借り、いざ出発!と思いきや、クラッチがある。あれ?予約したのはオートマ車。僕の免許もオートマ限定。おいおい、アイスランディク。レンタカーショップのお姉さんに状況を伝える。Sorry man テヘペロみたいな顔で新しいオートマ車を用意してくれる。ジャパニーズスタンダードなものの見方だと色々ショックがあるが気にしていたらキリがない。とにかく出発だ。

アイスランドの国道1号線(リングロード)は島の沿岸部をぐるっと一周する。時計回りでも反時計回りでも行ける。僕はなんとなく反時計回りを選ぶ。『逆』を好むという自分の一つの性質がそうさせる。なるべく違っていたい。でも全部違うのは怖い。人間らしいじゃないか。

まず、走行車線が日本とは反対である。いきなり対向車と正面衝突しかけるし、右折ウインカーを出そうと思ったらワイパーを出してしまう。先行きが不安すぎる。まだ死にたくない。日本から8500キロ離れた異国の地で交通事故で死ぬなんてヤダなあ。なんて思いながらアクセルを踏み込む。幸い、広い土地に少ない人口だ。渋滞なんてことはまずない。アイスランド人バンドOf Monsters And Menを聴きながら目の前に広がる絶景を楽しむ。レンタカーは7泊分借りた。1日6時間ほど運転すれば1周できる計算だ。時々道を横切る羊さんに気をつけながら、テント泊してみたり、綺麗なお姉さんヒッチハイカーを乗せてみたり、温泉に入ってみたりしてみる。島の中央部に行くため日帰りのバスツアーに参加もしてみる。オフロードをガタガタ走るのでお尻が崩壊しかける。とにかく日本と9時間も時差のある北極圏にかかる国に一人でいるという現実を骨の髄まで味わう。

旅をとおして一番印象的だった出来事は市民プールでみた光景だった。アイスランド人は大人でも思いっきり遊ぶ。本当に思いっきり遊ぶ。子どもに混じってウォータースライダーの順番を待ち、人の目を気にすることなく楽しむ。童心を忘れていないのだ。経験を重ね、身体が大きくなってもそこには純粋な好奇心がある。寒くて冬はろくに日の光を浴びられなくても工夫を凝らし、人生を軽やかに楽しんでいた。地元のアイスランド人が入るジャグジーに入ってみる。アイスランド語での会話が飛び交う。一言も理解できないが、みんな楽しそう。

食事は、食パンとプリングスサワークリームオニオン味にハリボーがメイン。たまにガソリンスタンドに併設されているレストランでマックより不味い2000円のハンバーガーを頼む。たまにゲストハウスで出会った人たちと高いビールを飲みにいき、ちょっとしたことで他のお客と口論になり、バーの女の子に声をかけてみる。

どこに行ってもそこには同じ人間の暮らしがある。大切なことは場所ではなくて、自分自身の在り方なのかもしれない。つぎはゆっくりオフロードの北西部フィヨルドを巡りたいなぁ。

スケボーか電動キックボードで走りたいな。 2018.7

Taro Yukino(雪野太朗)

Taro Yukino(雪野太朗)
95年お茶の国生まれ。お茶の国在住。リーマンしてます。
本とパフェとアイスランドが好きです。
エッセイ、紀行文、短編小説がメインのお部屋となります。
サメに噛まれるのが怖くてやれなかったサーフィンを始めた男です。明日天気になあれ。

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