国際協力って?三重の高校生が進めるグローカル

 北海道の最南端・函館で過ごした大学生活では、「国際協力」を学んだ。高校時代に聞いたある講演会がきっかけで、この道を進もうと決めた。それが今となっては、新聞社に勤めることになるなんて、海外に憧れた当時の自分には想像もつかなかっただろう。

 「国際協力って何だろう」。これが大学5年間で悩み続けた問いだった。アフリカや東南アジアの途上国や難民を支援すること?支援ってなに?現地で生活しながらすること?日本にいながらでもできる?募金とか?

 当時の頭の中は疑問符だらけだった。大学の講義を受けて、考えれば考えるほど、わからなくなっていった。そして次の段階がこれだ。

 「自分の目で現地を見てみたい」

 大学を休学してNGOが出す地球一周の船「ピースボート」に乗ってみたり、ヨルダンの難民キャンプに行ってみたり(後日また記事にします)。現地で活動している青年海外協力隊員やNGOの人たちにも会って話を聞いた。こういったことを繰り返しながらも、結局いつも最初の問いに戻ってしまう。「国際協力って何だろう」って。

 そんな問いを繰り返しながら最終的にたどりついたハテナがあった。

 「自分にできることって何だろう」

 この問いにたどり着いた後の、自分の解は明瞭だった。「伝える」ということ。現地に訪れてありのままを伝えるのでもいいし、国際協力を実践する人たちのことを伝えるのでもいい。最初の投稿にも書いたが、やはり自分にできることは「声」を伝えることだった。ここで新聞記者につながるんだと思う。


 三重県に赴任後、そんな大学生はいないかと探していた。すると見つけたのは、なんと高校1年生(現在は2年生)の2人組だった。たった2人でNPOを立ち上げ、アフリカ東部のウガンダの支援に乗り出していた。驚いた。すぐに取材させてもらった。


――――

チョコ作りでウガンダ支援 津の高校1年の市川侑奈さん・西井陽菜さん

 アフリカ東部・ウガンダでチョコレート作りの授業をしたいと、高田高校(津市一身田町)の生徒が、NPO団体を発足させた。地域の小学生へのワークショップなどを通して、「支援する側とされる側がつながるように協力したい」と意気込んでいる。

 団体名は「INAANZA(イナンザ) MIE」。1年の市川侑奈さん(16)と西井陽菜さん(16)の2人がつくった。きっかけは、6月に難民支援のアイデアを競う大会「未来ドラフト」(国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン主催)に参加したことだ。大会の課題テーマは、ウガンダの難民キャンプにいる子どもへの「一生忘れられない授業」を考えることだった。

 下調べを進める中で、ウガンダではカカオ豆を多く生産しているが、多くの子どもは、それがチョコレートになることを知らないという事実を知った。「それならチョコレート作りの授業にしよう」と決め、まずは自分たちでチョコレートを作ってみた。

 簡単だと思っていたが、カカオ豆をすりつぶすだけで数時間かかった。難民キャンプには、電気やガスはない。砂糖も十分に確保できないため、代わりに乾燥したバナナを使った。用意できる物や条件が限られた中で、何度もチョコレート作りを繰り返し、授業案を完成させた。

 2人のアイデアは、約300チームのエントリーから8チームに絞られる予選を通過。6月中旬に東京都で開かれた決勝大会に進んだ。審査員を務めたジャーナリストの池上彰さんらを前に10分間で発表。ウガンダに渡航できるグランプリには届かなかったが、来場者の投票で選ばれるオーディエンス賞を受賞した。

 「このまま終わらせたくない。ウガンダで授業がしたい」。大会を通じて国際協力機構(JICA)に足を運んだり、インターネットで調べたりするうちに、難民の実情を知ったことから、2人は大会後すぐに団体を発足。ウガンダの公用語のスワヒリ語で「はじまり」を意味する「INAANZA」を団体名にした。

 「難民キャンプにいる子どもと同じ世代の日本の子どもたちに、チョコレート作りを通じてキャンプのことを知ってほしい」と、12月には初めて小学生向けのワークショップを開く予定だ。ワークショップの様子は、ウガンダにネット配信し、子どもたち同士の交流もはかる。

 来年冬ごろにはウガンダを訪れ、チョコレート作りの授業を開く予定だ。ワークショップなどを重ね、将来的にはウガンダと三重の子どもたちのチョコレート作りのアイデアを合わせた「グローカル商品」を発案したいという。

 代表を務める市川さんは「物やお金を与える支援は即効性があっても、持続性がないと思う。人と人がチョコレートを通してつながる支援で、双方がハッピーになれる仕組みをつくりたい」と話している。(2019.11.25)

――――


 その後を聞いてみると、新型コロナウイルスの影響で活動が限られているものの、すでに地元企業と連携してグローカル商品の開発を進めていた。小学生向けのワークショップも数回開いたという。なんという行動力!

 近いうち、クラウドファンディングで、実際にウガンダに足を運ぶための資金を募る予定だ。その際は、支援をしてあげてください。


大瀧哲彰

Tetsuaki Otaki

95年北海道生まれ、大阪府在住。新聞記者。
執筆した記事、取材で感じたこと、文字にならなかった取材を文章にします。北海道、広島、三重、大阪、朝鮮半島の話題が多いです。

0コメント

  • 1000 / 1000

Kaede Apartment

2020年5月に始まったオンラインシェアハウスです。